主を仰ぎ見つつ

キリスト教的思索

「すべては導かれている―逆境を越え、人生を拓く五つの覚悟」を聴いて・・・


田坂広志が語る「すべては導かれている ー 逆境を越え、人生を拓く五つの覚悟 ー 」|あすか会議


<講演者:田坂広志、多摩大学院 教授/田坂塾・塾長/世界賢人会義 Club of Budapest 日本代表>


クリスチャンの友人から是非聴いてみてくださいというのが送られてきました。仏教、それも禅宗の教えに基づく講演でした。


病に侵され、お医者さんから見放され、もうダメ助かりませんと宣告された田坂氏が絶望の中にあった時に、人に勧められて、禅寺に行きました。


そこで、田坂氏は農作業をさせられるのですが、そこで、いろいろな病気を持ち身体的に困難を抱えている方々が積極的にその作業に取り組んでいる姿をみるのです。


寺に行って9日目ようやく禅師との接見があった時、田坂さんは、堰を切ったように自分の情況を話し、禅師の言葉を待ったのでした。さぞや深い勇気づけられる言葉が聴けると思ったのです。


そうしたら。禅師は、“あぁ、そうか、もう医者が見放したか”“そうか、もう命長くないか”と仰った。“はい”と答えると、禅師は、“そうか、命長くないか、、、、だがな、ひとつだけ言っておく、人間死ぬまで命はあるんだよ”


この言葉に田坂さんは、唖然としますが、(やがて)その言葉で、自分がもう死んでいた、心が死んでいたということに気が付くのです。ふりかえってみて、自分は、何ヶ月も過去を悔い、未来を憂い、死の恐怖の中で日々をすごしていたのだと思ったのです。


そして、最後に禅師が言った言葉、「過去はない、未来もない。あるのは、“永遠に続く今”だけだ。今を生きろ、今を生ききれ」という言葉が腹に響いてきたそうです。そして、その瞬間に「病を越えた」と言います。


病が治ったのではなく、(症状としての病は、それから10年続くのですが、)“あぁ、明日死のうが、明後日死のうがもうかまわん。ただ、この病に対する恐怖、不安、後悔・・・その為に今日という一日を無駄にすることは絶対にしない”“今日という一日を大切に、大切に精一杯に生きよう”“あした人生が終わりになるとしても、今日という一日は絶対に後悔のない生き方をしよう”、と思ったと言います。


そこから、田坂さんの“今を生きる、今を生ききる”「修行」が始まったという話です。すごい話です。


一時間ほどの緻密で説得力のある話を聞いて、禅宗というのが具体的にどういうものであるかが少しわかってきたように思いました。私のように仏教の素養のないものにも少しわかるように説明してくれたのです。


かつて(和尚と呼ばれた牧師)渡辺暢雄先生がおっしゃいましたが、仏教の思考は東洋の哲学ですから生半可に把握することは難しい深い思索です。


「今を生きる、今を生ききる」過去はない未来もない、あるのは永遠に続く“今”だけ。・・・これは、死を告知された者が“今日”を生きるのには、適切な言葉だと思います。


ですが、そういう危機感をもっていない者にとっては、“刹那主義”になる危険性があるのではないだろうかと思わされました。実際、私は、(若い時)そのように生きていた時がありました。今さえよければいい。いつ死んでもOK。私には、失うものがなかったからです。


それに、永遠に続く“今”という言葉で、私が思いだすのは、ギリシャ哲学の論理のなかに詭弁術というのがあって、覚えているのが「的に飛んで行く矢が瞬間的には止まっている」という表現です。この瞬間というのは、時間がとまった状態ですが、実際には、現実には、時間はあるという矛盾論です。


現実には、時間はあるし、過去も未来もあるのです。問題は、死んだ後どうなるんだということが残るだけなのです。もし、死んで、何もなくなるのか来世というものがあるのか?それがわからないから「死」がこわいのです。


私は、「修行して」今の逆境を乗り越えようとするより、その逆境をもエンジョイできればと思っています。それは、妻がいつも言っている言葉、Enjoy your situation ですが、神さまが与えてくださるものは、すべて感謝して受け止めることが出来ればと思うのです。


今、私は、まだ癌という病気とつきあい、心臓も弱ってきているようですが、いつ召されてもいいと思っています。私たちは、いつかかならず死にます。数年前に夫を失った日本に居る私の姉が「先に逝った方が勝ちだ」と言っていましたが、そう、残された人は可哀そうです。


使徒パウロは、「わたしにとって、生きることはキリストであり、死ぬことは益である」と言いました。


此の世を去り、愛する人たちと別れるのは寂しく、悲しいものですが、クリスチャンには再会の楽しみがあります。来世に希望のある人は幸せです。


See you later, Alligator! (アメリカの子供たちの別れの言葉:又会おうぜ!)


文責:ロバート イー

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